読書指導
読書指導
ここでは教科として存在しているわけではありませんが、学習指導要領の中で度々触れられており、重要度が高いと思われる「読書指導」について書きます。
※参考
読書、文字・活字文化に関する配慮事項
(2)生徒の読書意欲を喚起し、読書の幅を一層広げ、読書の習慣を養うとともに、文字・活字文化に対する理解が深まるようにすること。
引用元「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 国語編」p279
(※下線は馬締が施した。以下、引用は断りがなければ「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 国語編」による。)
読書習慣を養うことを目標に挙げています。これには「高校生の読書活動については、小・中学生に比べて近年極めて低調であること」(p279)があるとされています。これは文部科学省がまとめている別の資料からうかがい知れます。
学年が上がるごとに読書量が低下することはここ最近の話ではないように思います。恐らく経験として記憶にある人が多いでしょう。
読書習慣の低下には様々な要因があるように思います。日々高校生を見ていると次のような要件が考えられます。
①部活動にかかる時間の増加
②アルバイトにかかる時間
③学習塾にかかる時間
④娯楽の多様化(スマホ・ゲーム・SNS)(年齢が上がるとともに選択肢が増える)
⑤読書に対するハードル
中学校から本格的に始まる部活動(①)によって時間が減っているということが考えられます。部活動の時間だけだと数時間程度のことですが、疲労感やその他誘惑により読書の優先順位が下がります。高校生になると部活動だけでなく、アルバイト(②)の選択肢も増えるため、時間が無くなってしまう生徒が増えます。
他にも定期考査や大学受験のために学習塾に通う(③)生徒も増えます。放課後の時間を費やすことになるため、読書に回す時間がなくなってしまいます。
また、高校生になるとほとんどの生徒がスマートフォンを所持することになります。そこでSNSやゲーム(④)にはまってしまう生徒が多くいます。特にこれらは高校生をターゲットにしたものが多く、よく出来ています。娯楽への時間の大半がスマートフォンに流れてしまいます。
ここまでは物理的な時間が読書ではないものへと流れてしまう事柄でした。そして、意識的な問題です。
読書をすることが「当たり前」の行動ではなく、「意識高い系の人の行動」というような認識があるようです。「意識高い系」というのは、行動が他の人と違って一つ上という意味合いがあります。馬鹿にしたり差別したりするわけではないけれど、「私にはできない」というレッテルを貼っているように感じられます。
ここに「読書へのハードル」(⑤)を感じるのです。小学生の頃には感じなかった読書への心理的ハードルが生じています。また、高校生ならこれくらいの本を読まないといけないという思い込みもハードルを上げていると言えるでしょう。
時間的、心理的ハードルの高さが読書から遠ざかっているように思われます。
読書を広げるための方策
学習指導要領では読書の幅を広げるためには、各教科での取り組みはもちろんのこと、次のような視点から広げると書かれています。
生徒自らが学校図書館の司書や司書教諭、地域の図書館の司書などによる適切な助言を受けることが有効である。
(p279)
このように述べられています。確かにこのような取り組みは大切だと思いますが、ここに一つ現実とそぐわない内容があります。
学校図書館の「司書や司書教諭」です。まず、司書がいる学校はかなり少なくなっています。特に公立学校ではほとんど聞きません。また司書教諭に関しても、疑問があります。これまでの学校で見てきた司書教諭は、次のなり手がおらず、在職する職員が自費で免許を取りに行かされているという状況でした。特に国語科の先生が多かったですが、普段の国語の授業を持ちながら図書館業務をこなすことになり、非常に重労働となっていました。
地域の図書館でも司書が非常勤であることが多くなっており、読書指導を推し進めようとする意気込みと現実がそぐわないように思われます。ここは文部科学省が頑張って改善して欲しいところです。
とはいえ、各教科、特に国語に関しては「読む」能力を育てる機能が高いので、貢献していきたいところだと思われます。