『徒然草』「花は盛りに」




『徒然草』「花は盛りに」

 

使用時期

『徒然草』は中学校でも習う教材のため、親しみがある作品でしょう。作品名、作者名、冒頭の暗唱などがメジャーだと思われます。

 

作者である兼好法師(吉田兼好・卜部兼好)が思いつくままに書いた随筆とされています。作品の完成度から、三大随筆の一つとされています。

 

使用時期としては、助動詞を習っている時に読まれることが多いでしょう。冒頭は確認程度で扱われます。冒頭以降の話は、1,2題選択されて授業で読んでいくことが多いでしょう。

 

そのため、読解に加えて、文法事項もしっかりと捉えておきましょう。

 

(※『徒然草』共通説明)

 



本文

花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨に向かひて月を恋ひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け探し。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ。」とも、「さはることありて、まからで。」なども書けるは、「花を見て。」と言へるに劣れることかは。花の散り、月の傾くを慕ふならひはさることなれど、ことにかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝、散りにけり。今は見どころなし。」などは言ふめる。

よろづのことも、初め終はりこそをかしけれ。男・女の情けも、ひとへにあひ見るをば言ふものかは。あはでやみにし憂さを思ひ、あだなる契りをかこち、長き夜をひとり明かし、遠き雲居を思ひやり、浅茅が宿に昔をしのぶこそ、色好むとは言はめ。

望月のくまなきを千里のほかまで眺めたるよりも、暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う、青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる、木の間の影、うちしぐれたるむら雲隠れのほど、またなくあはれなり。椎柴・白樫などの、ぬれたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しうおぼゆれ。

すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは。春は家を立ち去らでも、月の夜は閨の内ながらも思へるこそ、いとたのもしう、をかしけれ。よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまもなほざりなり。片田舎の人こそ、色濃くよろづはもて興ずれ。花のもとには、ねぢ寄り立ち寄り、あからめもせずまもりて、酒飲み、連歌して、果ては、大きなる枝、心なく折り取りぬ。泉には手・足さしひたして、雪には下り立ちて跡つけなど、よろづのもの、よそながら見ることなし。

 

 

現代語訳

 

桜の花は満開に咲いているさまだけを、月は曇りなく照りわたっているさまだけを観賞するものか、いや、そうではない。降る雨を見ながら、見えない月を恋しく思い、簾や帳を下ろしてひきこもっていて春が過ぎていくのも知らずにいるのも、やはりしみじみと趣が深い。今にも咲きそうな様子の梢、花が散りしおれた庭などこそ、見応えがある。歌の詞書にも、「花見に参りましたが、すでに散ってしまっていたので。」とも、「具合の悪いことがあって、参りませんで。」などとも書いてあるのは、「花を見て。」と言ったのに劣ることであろうか、いや、劣ってはいない。花が散り、月が傾くのを惜しみ慕う習慣はもっともなことであるが、特にものの情趣を解さない人は、「この枝も、あの枝も、花が散ってしまった。今は見どころがない。」などとは言うようだ。

どんなことも、最初と最後こそがおもしろい。男女の情愛も、一途に夫婦としての関係を結ぶのだけをいうものであろうか、いや、そうではない。結婚せずに終わってしまったつらさを思い、結実しなかった約束を嘆き、長い夜をひとりで明かし、遠く離れた空の彼方の恋人を思いやり、浅茅の茂った荒れた家にともに住んだ昔をなつかしむことこそ、恋の情趣を解するといえよう。

満月で曇りなく照っている月をはるか彼方まで眺めているのよりも、明け方近くまで待っていてやっと出てきた月が、とてもしんみりとして、青みを帯びたように、深い山の杉の梢にかかって見えているさまや、木の間からもれる月の光や、さっと時雨を降らせた一群れの雲の間に隠れている月のさまなどは、このうえなくしみじみとした趣である。小さな椎の木や白樫などの、水にぬれているような葉の上に月の光がきらきらしているのは、身にしみわたるようで、情趣を解する友がいればなあと、都が恋しく思われる。

総じて、月や花を、そのように目だけで見るものだろうか、いや、そうではない。春は家から出かけなくても、月の夜は寝室の中にいながらでも月や花に思いをはせているのは、とても期待が持たれ、興趣が深い。教養のある人は、ひたすら好みふける様子もなく、おもしろがる様子もあっさりしている。片田舎の人に限って、しつこくすべてのことをおもしろがる。花のもとには、にじり寄り近寄って、わき目もふらず見つめて、酒を飲み、連歌をして、しまいには、大きな枝を、考えなしに折り取ってしまう。泉には手足を入れて、雪には降り立って足跡をつけるなど、すべてのものを、遠くからそれとなく見ることがない。

 



定期テスト問題

write

『徒然草』「花は盛りに」の練習問題を作りました!

普段の勉強や定期テスト対策にお使いください!

 

文法問題

用言の復習と助動詞の問題を作りました。本文がある程度あるので、幅広く拾うことが出来ました。

「完了」と「存続」の見極めには文脈判断が必要となります。今回、その練習が出来るように配置しました。

 

12a徒然草花は盛りに(文法)

 

 

読解問題

今回の問題は少しだけ考える問題を入れてみました。内容読解に関しては訳することで確かめることが出来るのですが、本文の表現から内容を読み取ることができるかどうかというポイントに注目してみました。

 

12b徒然草花は盛りに(読解)

 

 




 

リンク

徒然草 Wikipedia

あまりおすすめしない人もいますが、ある程度の情報がまとまっています。ここをスタートに検索をしてみるといいでしょう。

 

四季の美

徒然草についての記事です。本文についてもいくつか知ることが出来ます。

 

角川ソフィア文庫

初学者向けです。現代語訳も付いているようなので、気になる人は読んでみるといいでしょう。

 

内田樹訳

買うのは少しハードルがあるかもしれませんが、図書館などで探して読むのは良いかもしれません。少し違った分野の方の訳は新鮮です。

 

 

 

 

フォローしてみませんか?