『枕草子』「中納言参りたまひて」
「中納言参りたまひて」『枕草子』
使用時期
中学生でも知っている有名な作品『枕草子』です。「春はあけぼの」は中学校でも扱われることがあり、暗唱をした経験のある人も多いでしょう。
今回の話は、高校1年生で習うことが多い作品です。文法としては敬語が多く使われていますので、1年後半に扱うことが想定されます。
ただし、敬語よりも当時の時代背景や物語性を考えて、1年中盤で扱うところもあるでしょう。
本文
中納言参りたまひて、御扇たてまつらせたまふに、「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それを張らせて参らせむとするに、おぼろけの紙は、え張るまじければ、求めはべるなり。」と申したまふ。「いかやうにかある。」と問ひきこえさせたまへば、「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と言高くのたまへば、「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」ときこゆれば、「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひたまふ。
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。
現代語訳
中納言〔藤原隆家〕が(中宮様の御前へ)参上なさって、御扇を献上なさるときに、「私、隆家はすばらしい扇の骨を手に入れました。その骨に紙を張らせて献上しようと思うのですが、ありふれた紙は張ることができないので、探しているのでございます。」と申し上げなさる。「どのような骨なの。」と中宮様がお尋ね申し上げなさると、隆家様は「とにかくすばらしいのでございます。『全くまだ見たことのない見事な骨だ。』と人々も申します。本当にこれほどの骨は目にしたことがない。」と声高におっしゃるので、私が「それでは、扇の骨ではなくて、海月の骨なのでしょう。」と申し上げると、隆家様は「これは隆家の言ったことにしてしまおう。」とおっしゃって、お笑いになる。
こんな(自慢)話は、「聞き苦しいこと」の中にでも入れるのが適当だが、「一事も書きもらすな。」と人が言うので、しかたない。
リンク集
情報量が多いですが、情報収集の入り口としては良いでしょう。
ジャパンナレッジのサンプルページです。有料のサービスですが、図書館だと閲覧できる場所もあるので、調べてみると良いでしょう。
国語以外も色々載っています。『枕草子』の他の現代語訳も見られます。
NHKのネット版には授業で見せたい動画があります。今回は『枕草子』に関する話がありました。(おはなしのくにクラシック)