公立学校の先生の労働時間に関する問題
ここ数年、学校の先生の労働実態の調査が行われ、かなり過酷な状況であることがニュースで流れている。インターネットニュースでも見かけることが多い。インターネットで検索すると情報が出てくるが、計算方法によって少しずつ変わるので若干の差が生じる。
目次
ニュースソース
今回は様々なニュース記事がある中で、労働時間を問題にしている記事を検索した結果、上位に表示されている記事を取り上げておきたい。
中学校教員の8割が月100時間超の残業 働き方改革「上限規制」の対象外
一年も前なので、そんな古いニュースを持ってきても、と思われるかもしれないが、残念ながら事態は改善されていないので、今回のニュースソースとして使用しても問題ない。
中学校教員の労働時間を中心に取り上げられている。小学校や高校の教諭も残業時間が突出している先生が多いが、中学校の先生は平均値がそれでなくとも高くなっているのだ。労働時間を週単位や月単位に置き換えて計算すると、ニュース記事のようになるということであった。
そこで、新しく出たデータで計算するとどうなるかと思い、改めて計算してみることにした。
教員勤務実態調査(平成28年度)速報値
平成29年4月28日に出された教員勤務実態調査の速報値が公開されているので、それを取り上げることにした。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/04/__icsFiles/afieldfile/2017/04/28/1385174_002.pdf
確定値は平成29年度末に出るそうだが、今参照できる新しいデータはこのデータである。今回着目したのは、教員の勤務時間である。平日と休日(持ち帰りを含まない)と持ち帰りでどれくらい時間を費やしているのかが表示されているので参照することとした。
小中学校の教員の勤務時間の実態
この調査は、かなり面倒だと思われる表を記入しているようなので、ある程度信頼できるデータだと思われる。データを拾う前に、基本的な計算をしてみたいと思う。
現在の教員の勤務時間は、1日7時間45分である。(8時間勤務だと休憩が1時間あるが、7時間45分だと45分となる。)1週あたりの勤務時間は38時間45分となる。
過労死ラインとなる月80時間の残業を、週あたりで計算すると20時間となるので、過労死ラインを超えないためには、週あたり58時間45分以内が目安となる。(教員調整手当は4%なので、本来の超過勤務はもっと短くなるが……)
さて、速報値を見ると、平日の勤務時間は、「小学校57:25」となっており、目安を少し下回る。「中学校:63:18」となっており、すでに平均が過労死ラインを超えている。ただし、これには持ち帰り時間は含まれていない。それに、土日に出勤する教員も多い。それなのに、この調査では合計が分かりづらくなっている。
そこで、数値を拾って計算してみた。
平日 + 持ち帰り + 土日 + 持ち帰り = 週あたり合計
小学校 57:25 + 0:29 + 1:07 + 1:08 = 60:08
中学校 63:18 + 0:20 + 3:22 + 1:10 = 68:10
以上のような計算になった、これはあくまで平均値を足したものなので、これよりも少ない人もいるが、過労死ラインを超えている人が半数以上いることが推定される。さらに、小学校では85時間程度、中学校では117時間の残業時間となる。
中学校の100時間超えは、もはや殺人レベルと言っていいのではないかと思わされる。何度も断っておくが、これは平均値を元にだしたので、実際の合計平均とは数値がズレる可能性があるが、中学校教員の残業時間が以上だと言うことが分かると思う。
高校の教員の調査実態は分からない
高校教員の勤務実態調査は見つけることができなかった。というよりも、高校の現場にいるときから、調査された覚えがない。しかし、中学校とそれほど変わらないような気がする。(これはあくまで個人的な感想)
しかし、教科ごとの授業、部活動など形式が中学と高校では非常に似ているので、それほど大きな差はないと思われる。ただし、高校入試で生徒の選別がなされるので、各高校によって大きく異なる。生徒の学力や経済状況によるが、部活動が成立する学校と成立しない学校が存在する。
部活動を行える学校は、ある程度の学力があり、生徒の家庭も落ち着いている場合が多い。部活動には多少なりともお金が掛かるので、余裕の無い家庭の生徒はアルバイトをするために部活動ができない。ゆえに、部活動がある学校は部活動で時間が取られ、逆に部活動が成立しない学校では、生徒指導上の問題から時間が取られると言われる。
しかし、中学校の部活動問題と同じように考えると、土日の時間が取られるのは部活動が圧倒的である。こうした事情から、中学校の残業時間より若干少ないものの、小学校の残業時間よりも多いことが予測される。
見えない労働時間
高校の勤務時間の問題はあくまで推定だが、見えない労働時間があることも注意が必要である。学校現場特有かもしれないが、地域の行事や付き合いに教員が連れ出されることがあるという。
学校からの指示で土日や勤務時間外に行くわけだが、労働として認められないので、部活動引率手当も出ない。例えば、地域のボランティア活動に学校として生徒が参加する場合、そこに引率の教員が必要になる。その地域の教員がいれば、その人が行けばいいと思われそうだが、教員の勤務地は、教育委員会が決めるので、必ずしも近くの教員とは限らない。
他にも、残業時間が月80時間を超えることが連続したり、月100時間を超えたりすると、産業医との面談が義務づけられる自治体もある。その面談をするために、忙しい時間を削っていくことになる。つまり、面談をする時間だけさらに残業時間が延びるという事態になる。当然、少しでも早く終わらせたい気持ちがあるので、引っかかりたくない。そのため勤務時間をごまかしてしまう。最近ではタイムカードなどで記録が取られるようになってきているので、仕事が終わっていないのに、タイムカードだけ切ってしまうのだ。そうして、残業時間を調整して、少しでも時間を確保しようとすることが行われている。
教員勤務実態調査では、そのようなペナルティがないので、比較的正直に書かれているかもしれないので、むしろデータとしては正しいと言える……かもしれない。
さいごに
やはり、データを計算し直してみてもかなりの労働状況であることが分かった。今の公立学校の教員に残業代を支払うと9000億円かかるという話もあるくらいだ。かなりの予算が必要になる。
お金を支払わないというのも問題かもしれないが、何よりも今の労働時間では次々と教員が倒れてしまい、現状を知った学生が新たに教員を目指すかどうかという問題にもなってくる。適正な勤務状態にするということが先決だと思う。
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