小論文の書き方 サンプル添削 「チームワーク②」
小論文の書き方 サンプル添削 「チームワーク②」
小論文の書き方に悩んでいる人に、サンプル添削を通して、書き方の注意点を説明していきます。
今回は僕が書いた文章を添削してもらいます。
目次
今回のテーマ
今回はテーマ型小論文に挑戦してもらいました。
2020年度 信州大学・教育学部の過去問のテーマです。
「集団で何かを達成していく際に必要であることが強調されるチームワークについて、考えを書く。」
字数制限は800字です。
どんなことを書くか、事前に想像しておいてもらうといいかもしれません。
今回添削する小論文
原稿用紙の状態でPDFを作っています。何も添削をしていない状態です。ここから添削を入れていきます。
小論文の添削例
添削を入れたものを紹介します。手描きの添削結果のところに、番号が振ってあります。注意ポイントを書いていきます。
①指示語が合わない
傍線部を付けたところを読んでいくと、内容が合いません。「それ」という指示語を連続して使っているので、辿っていく必要があります。「それ」=「チームワーク」となります。
「チームの和を乱す、がそれに当たるのだろう」
「チームの和を乱す、がチームワークに当たるのだろう」
このように読み取られてしまいますので、文意が通らない状態になっています。
②投げかけない
小論文を書くと、「~だろうか」「~でしょうか」と投げかけてしまう人がいます。投げかけは、読者の興味や関心を引く効果がありますが、必ず文中でその答えを回収する必要があります。
この手法は、ある程度の分量があれば上手くいきますが、受験小論文の字数程度では失敗することが多いので使わない方が良いでしょう。
今回の場合も、終盤に投げかけを使っています。こうなると、回収できずに、読者に考えを委ねる形で終わってしまいます。
小論文は自己の考えや主張を相手に伝えるものですので、相手に考えを委ねてしまってはいけません。基本的には言い切れる形で書くようにしましょう。
③何に対して?
「大きすぎる」とありますが、何に対して「大きい」のでしょうか?「大きい」に対して「小さい」が存在します。形容詞は何かと比べているものがたくさんあります。その場合、比較対象となるものが分かるようにしないといけません。
ここの対象は「生きることが集団生活だ」です。どういう比較対象があるのかを示しておかないと読み手によって変わってしまうことになります。
④まず・最初
ここは重複表現です。「まず」も「最初」も1番目を表します。これもよくやってしまうミスです。重複表現は、「頭痛が痛い」などがわかりやすい例でしょう。
意味が重なっていないかを考えて書くようにしましょう。
⑤何の話か分からない
この部分は個人的な話しすぎて何を言っているのかがよく分かりません。また小論文の書き方ではなく、随筆のような書き方になっています。個人的な感覚の話をする場合は、論理的に記載する必要があります。
ただし、ここは論理的に説明するのは難しく、単なる感覚の話で終わってしまうでしょう。
(後半)
⑥誇張表現
今回の文章では、この段落に誇張表現が集まっています。この部分は、個人的な経験を元に書いています。具体例として個人的経験を持ち出すことは、小論文ではよくあります。しかし、この部分では一般化することなく、個人的な感情のまま終わってしまっています。
このような書き方になっていると、個人的見解を強引に推し進めているように読めてしまいます。小論文ではなく、随筆や感想文に近づいてしまいますので、気をつけましょう。
また、誇張表現の例は以下の記事を参考にしてみてください。
⑦「自信を持って~だろう」?
「自信を持って」という表現は小論文とはあまり相性が良くありません。基本的に主張や考えは自信を持って述べることが前提だからです。「⑥誇張表現」の項目でも指摘したように個人的な体験と感想がメインとなっていますので、登場した表現だと考えられます。
ここの問題点はそれだけではありません。表現が合っていない問題があります。
「自信を持って」という表現があるのであれば、後ろの表現は言い切るか、断定の助動詞で締めくくるべきでしょう。ところが、文末は「だろう」となっています。これでは自信がないように読み取られてしまいます。
自信があるのか、ないのか。よくわからない表現となっています。
⑧まとめきれていない
小論文の構成上、まとめの段落は必要です。最後の段落で自分の考えをどのようにまとめあげるかは非常に大切です。
今回の文章では、ここで将来の展望を書いてしまっています。自己推薦文などで、これからの学びについて触れる分には良いですが、小論文の場合は、現時点での考えを書きましょう。未来のことをお題の時は、夢物語ではなく、一つずつ予測を立てていく必要があります。
今回の展望は、自分自身がどう過ごしていくかということです。具体的な中身もなく、流れに身を任せるような内容になっていますので、これでは小論文とはいえない構成となっているでしょう。
⑨字数
今回の文章は文字数としては800字を超えていません。しかし、原稿用紙型の用紙に書く場合は、実際の字数ではなく、原稿用紙にあわせた計算方法を用います。
この原稿用紙は、基本的な400字詰めで、20字×20行となっています。よって、20字×行で数えます。段落構成によって生じた空白も字数としてカウントされます。
今回の文章の場合、42行となっています。添削の途中で改行したほうが良いところに添削を入れましたので、その改行が入るともう1行増えることになるでしょう。
上限が決まっている場合、1字でも超えてしまうといけません。そもそも試験では800字までしか書けないようになっていると思いますので、枠外になります。絶対に超えないように気をつけましょう。
さいごに
今回の文章は字数オーバーですので、基本的には採点対象となりません。それくらい字数には気をつけましょう。
また、誇張表現が多く、軽い話し言葉が見られます。「だろう」も度々登場します。これらの状況から、小論文の文体というよりも、随筆や感想文の文体と言えるでしょう。
また、個人的な体験からの考えがメインとなっていますので、客観的な事実を取り入れて、論理性を持たせる必要があります。
今回の文章の文体を自然に書いてしまう人は、小論文の文体を意識する必要があります。書き方を意識しながら、多く書く練習が必要となりますので、しっかりと練習していきましょう。